日刊ゲンダイ 奥野-1

2018年07月19日

 日刊ゲンダイDIGITALに、奥野修司氏というノンフィクション作家が「本当は怖い国内食品 」というコラムを書いています。内容をみていきますと、本当は怖くないことでも、危険と印象付けるたり勘違いをsさそうような書き方をされています。また「食べ物と健康に関しても精力的に取材を続け、」とありますが、もう少し精査されてほしいものです

 2018年7月10日の記事
「EUに無農薬日本茶を輸出し...日本人は農薬つきを飲んでいる。 」


題名からして感覚的に結論に誘導

 まず、「本当は怖い国内食品 」という括りで、このコラムの題名が「EUに無農薬日本茶を輸出し...日本人は農薬つきを飲んでいる。 」となっていれば、怖いねーと誘導されてしまいます。しかし、正確ではない文章です。例えばEUでポジティブリストに載っている農薬を使っても輸出できる。日本で流通している茶の残留農薬の実測では、多くは「検出されず」、検出されたデータをみてもEUの基準以下のものが大半なのです。

 これは、検出されたこともある=「農薬つき」といって、ほら危険といっているわけで、現実の検出例からみて、リスクはほぼないに等しいのです。

 EUの場合は、EUでは茶を生産しないために農薬登録自体がない農薬があったために(登録されていない=判断をしていない=一律0.01ppmになる)、安全性とは関係なしに一律の値になっていたなど、輸出で引っかかる要因はいろいろあります。その農薬も判断したとたんに日本より緩いこともあってびっくりしたこともあります(例:コテツ)。さらに政治的判断といって、例えばドイツでは緑の党への国内対策のためにといった駆け引きもあって、食べてどうかという基準から離れた判断もあるわけです。そもそも、EUのADIはTEASというくくりであって、日本より紅茶をよく飲む国民性から摂取量が多い=ADIは低くなるという傾向さえあります。

 また通常の栽培現場では、萌芽期に防除するわけですが、二番茶収穫まで20日間以上あるわけで、結果あまり残留しないと思うのです。実際の実測値でも、残留基準値に近い値は、ネット上に出ている中ではありますがないです。 どうも残留基準値が高く設定されている=そこまで残留された農産物が多いという「思い込み」があるので、多くの実測値から判断すればそれが間違いであることに気づくことでしょう。

思いつきで書いているが明らかに間違っている点

1. 「(引用)とくに14年ごろから、TPPが締結されることを前提にさまざまな農薬の残留基準値が緩和された。 」 
 TPPのために緩和されるということは外国の権益を増やすためのはずです。ところが、クロチアニジンは住友化学、国内で開発され生産されている農薬です。外国の農薬会社が儲かるようにするなら、むしろ基準値は厳しくすべきではないでしょうか。

 さらに記事の農産物も、マッシュルーム98%、ホウレンソウ97%、かぶ100%、春菊100%、ナス96%、ネギ91%(ワケギのデータは不明のためネギを参考)、緑茶91%と、自給率9割越えのほぼ国産野菜。このような自給率の高い産品に対して、TPPと農薬の関連性が見えません。

 それと国際基準というと、CODEX基準になります。これは、EUもMAL設定時には考慮している基準(規則(EC) No 396/2005 前文(25)。)ですから、本来なら日本も考慮するのはむしろ望ましいと書くべきではないかと思います。

2. 「(引用)湯飲みで飲まなくてもペットボトルで飲んでいることは考慮しなかったのだろうか。」
 とあるので、奥野氏はADIや厚労省の国民健康・栄養調査をご存じないらしい。

 ADIは「一日摂取許容量(いちにちせっしゅきょようりょう、英: Acceptable Daily Intake、ADI)とは、食品に用いられたある特定の物質について、生涯にわたり毎日摂取し続けても影響が出ないと考えられる一日あたりの量を、体重1kgあたりで示した値をいう。 (出典 https://ja.wikipedia.org/wiki/一日摂取許容量 )」

 その元となるのが厚労省の国民健康・栄養調査で、調査票のサンプルもネット上にあります。そこには、例えばペットボトルで500ml飲んだとか書くわけで、それらをリーフの量に換算し、年齢や性別による違いを鑑みて平均的な毎日の摂取量出しています。たしか平均は3gであって、3杯というのはどこから出てきた数値なのか知りたいものです。

 そもそもペットボトル飲料を飲んだところで何だというのでしょう。例えば一般社団法人アクト・ビヨンド・トラスト(反農薬側)の2014年3月のレポートでも、国内外のペットボトル飲料からは検出されていないわけです。

3. 「(引用)コメからも検出される。もちろん基準値以下だから日本では問題はないのだが、EUなら即販売中止だろう。」
 コメから検出といえば、ジノテフランがあります。ところが、農水省平成25年のデータでは、20検体中11検体から 0.006 ~ 0.088ppmで日本基準値2ppmからはるかに低い。ちなみにEUの基準値は8ppmと日本より高く設定されています(CODEX基準8、アメリカ基準9)。つまり検出されたからといって、EUでも販売中止にはなるわけがない。

 EU>日本になっているのは、日本の主食、コメだからです。これはEUのADIをみると、アフリカ米、ワイルドライス、インディカ米という項目に見られるように、副食であるために食べる量が少ない=高く設定されるということなのです。(つづく)


© 2021 鈴木猛史
Powered by Webnode
無料でホームページを作成しよう! このサイトはWebnodeで作成されました。 あなたも無料で自分で作成してみませんか? さあ、はじめよう