日刊ゲンダイ 奥野-2 全てが嘘の記事
この記事は題名から最後までミスリードの内容でした。記事の全てが誤った主観という、フィクション作家でもここまで酷くないだろうと思えるシロモノです。
おいしい「一番茶」は毒まみれ...高濃度で農薬検出の衝撃
- 2018年7月7日
(引用開始) 日本の農家が大量に農薬を使っても問題にならなかった背景には、農薬の残留基準値があまりにもゆるすぎることにある。
たとえばお茶だが、農水省のホームページには、お茶の栽培に使われる農薬は、実に200種類以上も掲載されている。
その中には、たとえば台湾、アメリカ、オーストラリアなどでは検出されたら輸入できない「不検出」で、EUは0.02ppm(㎎/㎏)以下なのに、日本の基準値が40ppmと2000倍もゆるいものもある。シラフルオフェンという農薬など、EUでは0.01ppmなのに、日本は80ppmと、なんと8000倍もゆるいのだ。
(引用ここまで)
0.01ppmというのは、EUのポジティブリストで「使っていい農薬」ではないだけです。つまりその農薬の毒性について調べていないというだけであって、検出限界である0.01以下=「不検出」にしておこうということなのです。
なぜこうなるかというと、EUでは茶を栽培していないために、農薬メーカーが登録申請をしないからです。何億もかかりますから。
なお、シラフルオフェン(MR.ジョーカー水和剤、キラップJ水和剤
)という農薬は、除虫菊の有効成分であるピレスリンを基につくられていて、しかもケイ素がくっついているためか、合成ピレスロイドに比べて魚毒性が低いのが特徴です。また蒸気圧が低い(揮発しにくいのか?)、植物に浸透しにくい らしいのです。
(引用開始)
それにこの農薬、コメだと約260分の1の0.3ppmで、大豆は800分の1の0.1ppmだ。お茶の葉は洗って飲むわけではないのだから、むしろ米や大豆よりも低くしなければいけないと思うのだが、なぜか数百倍も多いのである。
(引用ここまで)
筆者はADI(一日摂取許容量 )を理解していない。コメを260g食べることは出来ても、お茶をそんなに食べることできますか?
(引用開始) クロラントラニリプロールという殺虫剤もよく使う。日本の基準値は50ppm。EUが0.02ppmだから2500倍。韓国と比べても1000倍だから日本の基準値は突出している。この農薬もコメや大豆の250~1000倍だ。
(引用ここまで)
EUのMRLを見てみますと、0.02*ppmと確かにありますが、「* Indicates lower limit of analytical determination」という、分析の下限?というのが気になります。一方で、例えばキャベツとかが20ppm、果物が1ppm、HOPS 10ppmになっています。
さらにホップについては以下のレポートもあります。
■[EFSA]ホップにおけるクロラントラニリプロールの輸入トレランスの設定
Setting of an import tolerance for chlorantraniliprole in hops
First published in the EFSA Journal: 29 June 2018
https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/5312
DuPont de Nemours社によってフランスの管轄機関に輸入トレランスを設定するための申請が提出された。現在、暫定的なMRLとして10 mg/kgが設定されているが、米国で認可されている用法を支持するかたちで40 mg/kgとする案を導出するのに十分なデータが提出された。ホップ中のクロラントラニリプロールの残留物を管理することができる適切で実用的な分析法が利用可能であり、その検証された定量限界(LOQ)は0.01 mg/kgである。EFSAは、報告されている農法に従ってクロラントラニリプロールが既存の認可された用途で使用されている限りにおいては、生じる残留物を消費者が長期摂取しても、健康上のリスクを生じる可能性は低いと結論付けた。規制目的のリスク評価で用いるのに適した信頼できるエンドポイントが提示されている。
ホップはドイツで生産されているのでしょう。ドイツといえばビールですし。上の記事では、EUでは基準値が10ppmで暫定的に設定されているけれど、さらに40ppmでも良さそうというデータがあります。一方で基準値が設定されていない作物は、一律0.02*にされているというのが実際です。つまり判断をしていないEUと判断をしている日本と比較するのがおかしい。
なお、クロラントラニリプロール(商品名:サムコル)という農薬は、昆虫の筋肉細胞内のカルシウムチャンネルを特異的に活性化させるが、ほ乳類には感受性が極めて低い選択制農薬らしいです。 こうした比較的、環境や狙った害虫以外に影響が少ない農薬をやり玉にあげるのですかそうですか。ただし、使い続けるとリサージェンス起こりますし、一部産地ではもう効きません。
(参考文献)
細胞内カルシウム動態のかく乱を特徴とする殺虫作用機構の研究
(引用開始)お茶は、お湯を注いでそのまま飲むから農薬を不検出にしている国は多いが、日本では、①茶葉を食べない②一度に使う量が少ない③茶葉に残っている農薬は溶け出しにくい――などといった理由で、基準をゆるくしているそうである。
クロチアニジンなどのネオニコチノイド系は水に溶けやすいということは検討されなかったのだろうか。(引用ここまで)
他国で不検出にしている基準値の多くは、単なる判断していない農薬というだけのこと。そもそもADIを理解していれば、①②③の理由全てが主観に基づく嘘であることは明白。さらにADIの基になる厚労省の「国民食生活実態調査」や食品安全委員会による「農薬評価書」等を見れば、食用や抽出液まで考慮していることも分かるはず。
(引用開始)おいしいお茶ほど農薬をよく使うと聞いたことがある。害虫もおいしいから食べるのだろうか。年間に10回以上まくそうである。
■高濃度で農薬が検出される衝撃 (引用ここまで)
こっちが衝撃だよ!
題名にもあるのに、高濃度って何か、どこで検出されたかが一切書かれていない。一番重要なのじゃないの?
例えば、ネット上では、農水省のデータや一般社団法人アクト・ビヨンド・トラスト(abt)のデータなどがありますが、検出されたデータをみても「高濃度」とは言わない。GAP講座を受講すると農薬検査は「公的信頼性がある検査機関に依頼(例:食品衛生法に基づく登録検査機関/国際認証ISO17025など)」と習うので、データはどこで採取してどこで検査してどんな値が出たかが重要になります。
(引用開始)余談だが、一番茶は、農薬を散布してから摘み取るまでの期間が短いから、高濃度で農薬が検出されることがある。一番茶はおいしいが、無農薬でなければそれなりに覚悟して飲む必要があるということだろう。
(引用ここまで)
題名にもあるのが余談とは恐れ入りますが、一般に気温の低い一番茶の生育期間は長く、「農薬を散布してから摘み取るまでの期間が短いから、」という部分は、農家から見て意味が分からない。さらに、先の分析データをみれば、暖かくなって病害虫が発生する前に収穫する一番茶よりも、二番茶や秋冬番茶のように、暖かくて病害虫が活発に活躍する時期の方が、残留することが多い。安いお茶の方がということになるが、実測値を見れば、リスクは極めて低いとしかいえない。
(引用開始)ちなみに中国にはお茶の基準値がないから、どんな農薬が使われているかわからない。(引用ここまで)
(引用開始)2014年に中国産ウーロン茶を調べたことがある。お茶は重金属類と結合しやすいのか、鉛や水銀などがよく検出された。外食産業で使われるお茶や安いお茶は中国産の茶葉を使うそうだが、だからといって、重金属を検査したとは聞いたことがない。ドリンクバーなどで、お茶の粉を湯飲みに入れてお湯を注ぐものもあるが、あれって大丈夫かしら、とつい思ってしまう。(つづく)(引用ここまで)
もう10年以上前の話ですが、中国では、下級茶に色をよく見せるために染料を混ぜて いたことがあったそうです。また日本でポジティブリストが出来たとたんに、中国からのウーロン茶の輸入量が激減したこともあります。